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(第2回)監査計画とチェックリストの進化

初回の「内部監査の進化の過程」ではそれぞれの組織のマネジメントシステムがどの段階にあるかを示してみました。 導入期、定着期、成長期、発展期の4期に分けましたが、皆様はそれぞれ独自の区分をされているかと思います。ひとつの事例としてご理解いただけると嬉しいです。

  • 導入期=他社事例やコンサルタントのアドバイスを参考にしながらシステム構築。
  • 定着期=自社システムへのこなれ
  • 成長期=本業とシステムの一致
  • 発展期=経営管理との一致

まとめてしまえば上記のようになるでしょうか。皆さんの組織はどの段階でしょう?

時期 時期内容 システムの状況 内部監査状況 内包する課題
導入期 規格適合確認期 規格に合致する文書の作成中心 規格項目に対するYES・NOチェック期 システムと現状の乖離がおきやすい
定着期 自社システムとの適合確認期 業務改善サイクルの定着期 自社のマネジメントシステムと現状の一致確認期 監査のセレモニー化
成長期 プロセス・パフォーマンス確認時期 マネジメントシステムと本業の一致 パフォーマンス重視の有効性確認 ISO導入効果の可視化・自己宣言の可能性要求
発展期 インーアウト・影響確認時期 統合システム・複合システムへの進化 サプライチェーンのインからアウトまでの監査 監査の長時間化、統合・複合監査員育成の手間

監査計画とチェックリスト

さて今回は内部監査における監査計画(プログラムと計画)の進化とチェックリストの活用法について述べていきます。 ここでは監査計画を

  1. 監査プログラム
  2. 監査計画

の二つに分けました。ISO19011(品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針)では、

  • 3.11 監査プログラム - 特定の目的に向けた、決められた期間内で実行するように計画された一連の監査(3.1)
  • 3.12 監査計画    - 監査(3.1)のための活動及び手配事項を示すもの

というように定義されていますが、かなり固くわかりにくい表現となっています。 今回の連載では便宜上、それぞれの言葉を下記のような意味で使わせていただきます。

  • (内部)監査プログラム - 組織全体の監査の流れ
  • (内部)監査計画    - 組織内で行なう個別の監査の流れ

この定義の仕方に異論のある方もいるかと思われますが、監査プログラムという言葉があまり一般的ではなく、両者を混同している組織が案外多いので、混乱を避けるためにこのように使い分けていきます。 ただし、中小の組織では両者をひと括りにしても、実務には差支えが無い場合が多いです。

監査プログラムもPDCA

監査プログラムで求められるもの

「監査プログラムの管理のためのプロセスフロー」は、ISO19011の5.1項にあらわされています。

isos2-1

この管理のためのプロセスフローでは、マネジメントシステム監査そのものに対し、PDCAサイクルを回し、継続的に改善していくための流れが示されています。 当然のことですが、企業における内部監査でも、監査の効果を上げるために継続的改善が必要です。 しかし現状は「内部監査を継続的に改善していく」ことを意識して取り組まれている組織は、案外少ないのではないでしょうか。 「成長期」「発展期」を迎えている組織でも、監査プログラムそのものが進化していないケースがたまに見られます。 組織は生き物ですので、大きく業績が伸びている時、業務を縮小していく時、分社・合併などの変化があった時、生産アイテムが変化した時等、それぞれの実情に合わせて監査プログラムは変化・進化していくのがベターではないでしょうか。 プログラムがしっかりしていれば、手順は自然に定まります。

次の章では、監査プログラムの中で一般的に良く見られる「集中監査方式」と「循環監査方式」について述べていきます。 またそれぞれの監査方式をわかり易く、計画図で表します。

監査の方式

集中監査方式と循環監査方式

1.集中監査方式

比較的ISO導入年数の浅い組織や規模の小さい組織は、年に1~2回の頻度で、ある特定の期間に組織全体の内部監査を行なうことが多いです。 期間は数日~一ヶ月以内で適用範囲内の組織をすべて監査します。 「内部監査は○月と△月」というように、実施月を決めて行なっている組織も見受けます。

長所

短期間でいっせいに監査を行なうため、会社全体にISOの自覚を促し、監査側と被監査側が共通の認識を持てるという効果があります。小さな組織では、監査中に両者が一体となって改善案を考えることもあるでしょう。

欠点

繁忙期・期初・期末・月末など時期によっては被監査側の協力が得にくく、日程の合意調整に手間取るときがあります。内部監査チーム数が多い場合には、業務との調整に苦労することがあります。また、不適合や改善勧告が一時期に集中して出されるため、是正処置や予防処置および処置の効果確認などをじっくりと確認・観察することが不足する場合もあります。

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2.循環監査方式

規模の大きい組織では、各部門の業務の専門性が高くなり、組織も細分化されていきます。また、集中監査を行なうための監査チーム数の確保や、専門家の配置が難しくなってきます。そこで年間を通して、常にどこかの組織が内部監査を受けるようなプログラムを組むことになります。

長所

部門に対する監査時間の制約が少なく、被監査側とのコミュニケーションが円滑になり、落ち着いた監査が可能となります。また、日程のすり合わせに余裕が出来、監査員の育成にも時間をかけられます。監査時に発見された不適合や改善勧告の内容を、他の未監査部門に伝えることによって 予防処置が可能となります。

欠点

期初の監査と期末の監査ではタイムラグが大きく、同一時点での全部門比較がやり難くなります。また、重要な部門は期初と期末というように、複数回の監査が必要になるでしょう。

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以上のように、集中監査方式、循環監査方式共にそれぞれ長所・欠点はありますが、両者の組み合わせを臨機応変に行なうと良いでしょう。 組織が成熟してくると循環監査方式で行い、重点監視部門や重大不適合発生時は集中監査(特別監査)を行なうのもひとつの方法です。

監査の重み付け

効率の良い監査のために

ここで少し本題から外れてしまうかもしれませんが、組織のどの部門、どの項目に力を入れて監査を行なうのが重要か、結果として効率を上げるにはどうすれば良いのかを少し述べます。 環境では、環境負荷が大きな職場、間接影響を大きく及ぼす部門が重点監査部門になりますし、品質では基幹プロセスに関わる職場が重要です。また労働安全衛生では、薬品を大量に使用する職場や、機械を取り扱う現場になるでしょう。 それぞれの企業・組織により、重点部門は違うはずですが、プログラムへの反映は重要です。

環境監査を例にとって、図-5に表してみました。

isos2-4

  • /は今回監査では見ない項目
  • ◎は前回監査で不適合又は改善勧告が出された項目
  • ●は重点監査項目
  • □は通常監査項目

図-4の循環型監査方式と図-5を上手く組み合わせると、かなり詳細な監査プログラムが作成できます。さらに前年度監査結果と当年監査計画を対比できるプログラムに進化させれば、 前年度監査計画⇒監査結果⇒結果分析⇒当年度監査計画の流れがスムーズになり、PDCAが回ったより進化したプログラムとなります。非常に大規模な組織でも、3年程度で全組織の全項目が確認できるようになるでしょう。

監査計画

監査プログラムが出来上がると、各部門に対する個別の監査計画を作成します。システム導入間もない組織では、個々の監査計画も事務局主導で作成することが多いでしょうが、システムが定着し成長してくると、徐々に内部監査チーム(リーダー)が定められた様式(雛形)に従って作成していくようになります。内部監査チームが計画を作成し運用する際に、下記のような問題が発生する可能性があります。

被監査側とのコミュニケーション不足

監査リーダーが被監査側と事前に監査計画書のやり取りを行い、「監査目的」「監査基準」「監査日時」「場所」その他を決定しておくのが通常ですが、案外、

  1. 監査に立ち会う被監査側メンバーの指定
  2. 現場施設への立ち入りの通知
  3. 準備してもらいたい文書、記録類の指定

などが漏れる場合があります。いずれも、監査当日のキーパーソン不在や監査時間不足などをまねく可能性が高くなります。

監査チーム内でのコミュニケーション不足

事務局がメンバーを指定する場合でも、監査リーダー主導でメンバー人選を行なう場合でも、メンバー間の相互コミュニケーションは重要です。 監査対象部門が大きい場合は時間配分を考え、チームを複数に分けたり、被監査部門の業務に精通した「責任を負わない」監査メンバーを当てはめることが必要です。そのために、監査メンバーがどのような知識・技能・力量を持っているのか、リーダーは事前に情報交換を行なう必要があります。 効率の良い監査計画を立てるためにも、メンバーの力量把握は確実に行い、計画に反映させなければなりません。

このような問題が発生しないように、事務局サイドでも注意が欲しいところです

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